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虫のようにわいてくる

生に吐き気を覚えるばかり

 

生をまっとうする気などもとよりまったくない

 

運命を信じている

生は呪わしいものであると知っている

特に私に至っては

 

あの小児のことば

「この中に怖い人がいる」

皆呪わしいもののように逃げていく

 

 

巨大な鉄の球がそのアルミのようなメタリックな光で

夜を照らす。まるで吹き飛ばしたかのように回りに灰色の雲の塊が漂っていた。それは巨大すぎるし私を圧倒するには充分すぎる、 

月に脅迫される 

どす黒い海面を照らしていた、、

 

原理、原則の宇宙のなかで盲目で聾唖の私にどうしろと

夢中になれない

夢の中で不快なものばかり

逃げ道は

 

真っ黒な煙の中で自分自身の熱でうなされる

炭のようになって黒煙を吐き出す

心臓は凍てついた氷河の海底に深くゆっくり沈み、やがて鼓動は静かに消える

それなのに指で胸を激しくかきむしらずには居られないようなざわめきが沸いてくるのだ。

人々はこの世の災厄である私を瞬時に感じ取り呪わしい何かに圧倒され

すぐに私から離れたいと一心に思うだろう

早く、早く逃げ出さないと、ここから。

これは存在から最も遠くの何か別の

極めて気まずい何かに違いなく…

腕が、足が苛立ちを感じている

落ち着かない、詰め込まれて

息ができない解放されたい

 

 

 

 

破滅的とはどういうことなのだろう

彼は破滅に一歩また一歩確実に確信を得て近づいてゆく、積極的というよりは彼の動力がエネルギーがなにか回る車輪に絡みついたように突き進んでしまうのだ

ああ、こんなはずでは

しかし、彼の周辺の人々は実に淡々と生を押し進めてゆくのだ、目の前で事故が起きようと彼らは頓着しない、彼らは用意された料理を食べることにしか興味がないのだ。用意されたコースを堪能し、否それでなきゃならないわけで、決まりどうりの文句を教典のように淀みなく淡々と最後の頁さえあっさりと口にするのだ

彼はそれが納得いかないようです 

彼にとっては生、存在そのものが問であり続け、そのなんたるかを探すことが第一の命題らしいのです

 

ああ、こんなはずでは

ここまで退屈と苦痛が混ぜ合わせられ胃酸と

一緒に吐き出される現実はかれを決して許すことはない

それでも彼は頑なにもう一度その吐瀉物へ果敢にも立ち向かおうとするようです

 

何故なら

 

結局ここまで遡らなければからなかったのは

私の存在そのものの中途半端で脆弱性のためであったから

それがために気が狂うように存在の地下を掘り進めたし、その核に存在の分裂性を目の当たりにする羽目になった

外傷性との出会い

 

多くはある一定の効力を持ち合わせているがゆえにその効能に依拠する健全さを持ち合わせている

ゆえに彼らは遡及する必要がない

 

我々の精神の核心にみとめられる特徴とは分裂的な認識の断片を統合イメージによって括ることで成り立つ主体ということらしい

 

自己とは中心にある埋められない空虚の周辺に散らばった断片

 

彼等が中心へ向かう時私はすごく速く中心より遠くの方へ遠心力で離されていく、

そうなるとますます自己は自己自身を確立しているような気になってくる…

絶望的な空虚に包まれた無気力から一瞬だけエネルギーの塊のように激しくなる。でもまたすぐにおさまってしまう。勘違い

 

僕には眩し過ぎるんだ

蛍光灯の光さえ僕を傷つけるのには充分だ

情報の巨大な波に溺れて窒息しそうになる

見たくもない聞きたくもない、刺激物ばかり

彼らはまるでマネキン人形みたいにキレイだ

それも吐き気をもよおさずにはいられないほどに

目の裏側で鈍い痛みが脈打って…ずっしり倦怠が身体の意欲を抑えつける…

手の震えを抑えることができない

とにかく退屈と苦痛がずっとスローで流れている感覚…もっと早回しできれば

 

乞食だ

肉体も、精神も

 

すべての尊厳を剥奪された存在だからだ

運命から唾を吐きかけられ、思いっきり石を投げつけられ、残飯をぶちまけられる。もはや、抵抗する術を持たず、ただ身体をビルの壁にもたれかけて宙をぼんやりと眺めているだけ

 

でもその姿こそ存在の姿を最もよく表した象徴的なものなのだと私は思う

 

皆そうはなりたくないから幻想の衣を纏う

 

私はいままで主義者でないものを見たことがない

誰もがそれを手にしてしまう

 

生きているって最悪だ