75

陽炎

 

かつての幻

過ぎ去った記憶の痕跡

憧憬、心象の轍

虚無、空しさに消えてゆく輪郭

停滞、延々とつづく時間、時間、時間。

引っ掛かりがない

何度も繰り返し湧かぬ実感

虚しい嘘

 

過去を鍋でぐつぐつ八時間煮ようが 

壷の中に大切にいれておいたら次にあけるときには一度は腐り、そしてひからびて、醜悪が出来上がる。

吐きもどしてはかき集め、あまりにみすぼらしい私を不思議そうに見つめる寒々しい皆の目はわたしの心臓を剃刀で切り裂くのだ。

 

「…でも、いいんだよ」

何がだ?

一体何がいいんだ…?聞き飽きた

 

契約の合意と破談

止まることを知らない彼等

決着をつけてくれやしないだろうか

だらだらと流れるコマーシャルをもう

眺めたくないんだ